InternetとDJ

主にブロードバンドが普及しWEB2.0と呼ばれる現象が出てきた以降のインターネットとDJについて考える。自分がPCDJをしているからという事もあるのだが、考えていくと非常に面白い。インターネットとDJのフィールドはかなりかけ離れている。だが、最近のTRAKTOR等のデジタルDJソフトの台頭を考えるとその距離は縮まりつつあると思う。
インターネットは端的に言えば情報を距離に関係なく瞬時に送る事を可能にした。例えレコードであったとしても、録音してWAVにでもすれば、音を劣化させずに1分程度の時間で送る事が出来る。そして、データは簡単にコピーする事が出来る。1度、レコードが世に出て100人が所有したとして、もしかしたらそのうちの1人の物好きがP2Pネットワークにそのデータをアップロードするかもしれない。
そうなると今までDJの特権だった音源を所有しているという事は果たして価値を持つのだろうか。スタジオヴォイス3月号のオウテカのインタビューにDJについて興味深い発言があった。

○音楽はライヴやDJの場で楽しむものとなり、CDやレコードを買う人が減ってきているようです。例えばDJはもはや音楽的な教育者とはなり得ないのでしょうか?
「(中略)DJにいたっては本当に大変な時代だ。以前はレコード・コレクションを増やしていく事でその存在意義も成り立っていた。今では、音楽をリサーチするのがとても簡単になってしまった。バリアーがないんだ。昔はみんな、同じクラブの同じパーティーに毎週通い続けていた。同じレコードがかかる度に盛り上がれたんだ。今と当時では、音楽へのアプローチの仕方が違う。今はDJ以上に音楽を所有する事が可能になった。DJがもっていた特権や価値は、今ではもうないんだ。」

まさしくその通りだと思う。それでは新しい価値をどう作るのかそこが問題になってくる。データベースへの依存から楽器としてのDJの役割を突き進めターンテーブリストとして価値を生み出すことも有りだろう。しかし自分はそんな事をやりたいのではたぶんない。データベースへの愛着を捨てる事は難しい。
むしろここは大体に所有という概念を情報に置き換えることでなんとかするしかない。レコードから無数のP2Pネットワークへ。自分が繋げる時ほとんどP2P音源は使っていませんが、それは少し後ろめたさがあるのと、ポートが開けないのと、もしP2Pをがんがん使ってDJやるとしたら「僕の体はネットワークだ!!!」とクラフトワーク張りに言えるぐらいにやらなければ意味がないので、その為にはあまりにP2Pを使うと選択肢が多くなり過ぎて疲れてしまいそうだからやらないという言い訳です。オーディエンスが音源がリーガルかイリーガルか気にするとは余り思えないないので、本当はP2Pをするべきなのでしょうが・・・所有という概念がなくなったら、人より先に多くの情報を知る事で価値を作る。RSSリーダーのフィードを頼りに最先端のその先の先へ行く。逆にレコ屋を駆け巡って足で情報を仕入れる。情報で溢れるのが快楽の人はそれでいいかもしれないが、そうでない人は苦痛かもしれない。でも大体DJなんて情報ジャンキーでしょう。
では、逆の方向を考える。閉鎖的な所有で価値を保つ。ダブプレート。ダブプレートとは?

レゲエのサウンド・システムは、しばしばサウンド・クラッシュと呼ばれるショーにおいて、互いに音で競い合う。このため、ライバルに勝つために、サウンド・システムは本来市場調査やプロモーション目的で使われていたダブプレートを「武器」として使用するようになった。自らのサウンド・システムでしか掛けることの出来ないより新しく、より珍しいダブ・プレートを録音するのである。
ダブ・プレート - Wikipedia

これはアーティストの一歩手前の行為であるが、新しく曲を作る事でそこでしか聞けないわけだから価値は有る。くれぐれもインターネットにアップロードしないようにすればだが・・・。つまるところは曲作れよボケ!!!って事ですか。それじゃあ、DJとしてはあまり解決にはならないんだけれども、上手くデータベースを糧にして組み合わせればそれはそれで悪くはない。というか自分はそういうのじゃないと曲なんて作れたもんじゃない。
単にレコード・コレクションを増やしていくことは価値をなくしたが、まだまだDJがやれる事があると信じたい。いやもうDJという名前に関係なく情報をダンスフロアでの価値に還元できれば満足です。