もってけ!セーラーふく Re-Mix001 -7 burning Remixers-

もってけ!セーラーふく Re-Mix001 -7 burning Remixers-

もってけ!セーラーふく Re-Mix001 -7 burning Remixers-

アマゾンからこの前届いた「らき☆すた」のもってけ!セーラーふくのリミックス集。もってけ!セーラーふくは買わなかったんだけどこれは買った。面白すぎる。こう来るかとココロでは思ってたけどやっぱりこう来るしかなかったんだろうね。

リミックスを担当しているのはeicheph、来兎、bassjack、柏森 進@MOSAIC.WAV、名無しさん、小池雅也@4-EVER。
eichephはサイトを見たところによると普段エレクトロニカ系の楽曲やDeath Tek Metalというデスメタルとテクノを融合させたかなりオモシロイ音楽もしている。【調子こいて玉砕ミックス】は8bit系の音色を入れてテクノポップ色を残しつつも完璧な4打ちソングになっている下地の上に切り刻まれた原曲の声が入る。歌詞の物語性を排除しつくした(原曲もないんだけど)完全にノリ重視のダンストラックである。【青春orzミックス】も同じようにやっぱりテクノポップの影響が垣間見れる。前半は癖のあるシンセメロディーと原曲の声で徐々にテンションを上げていく3分辺りで突然ギターが炸裂して打ち込みも合わせてポップソングに一気に変わる。クラブソング的マナーに則しても考えられないしポップソングとしても異端である。Death Tek Metalの要素がここで盛り込まれているのだろうか。wikipediaによるとbaasjackも深澤秀行でeichephとTrack Producerが同じ名義なので実質eicheph変名のトラックである。【中の人on the floor mix】はリミックスの中では唯一原曲を遅くして使っている。BPM120前後。トランス的なシンセ音のに合わせて原曲の声が展開される。クラブを意識したのかあえてそれをパロディー的に扱ったのか分からないが面白い曲である。【グルコサミっくす】も名無しさんだがeichephの変名である。曲じゃなくてセリフだという意見がレビューなどではあるが僕はこれは非常に実験的な試みの楽曲だと感じている。エレクトロニカぽい音色を思わせるローファイなドラムにサンプリングされたであろう古臭い映画音楽っぽいやつ?(ココらへんに詳しくないから説明するのが難しいのだが聞いてもらえれば分かると思う)にらき☆すたのキャラクターの会話がのっている。奇妙な組み合わせ。会話の部分だけ除けば北欧の方のエレクトロニカにあってもおかしくなさそうな曲。そんなに詳しく無いので印象だけで語ってるが・・・。
この多様な4曲には手法的にはナードコアの要素も含まれるがそれより明らかに手が込んでいる。リミックスを担当したeichephが頼まれないでこういう曲を作るとも思えない。なので、こう企画があってからこそこの4曲は聞けた曲だろう。eichephをリミックス担当に選んだランティスの人は本当にセンスがあると思う。
来兎は以前からエロゲーソング界隈で中々オモシロイ曲を作っていたので注目していた。インディーズで風葉として新東京ハイパーウェイというアルバムも出していたりする。【メタボ対策Mix】は印象的なのはまず疾走するユーロビート的なシンセ音で曲の雰囲気をそれが作り上げている。BPMは原曲より少し速いがキックは行き過ぎず軽い感じで全体的に良質なポップミュージックアレンジになっている。こういう楽曲はアイドルやアニメ周りのインディーズには多いのでその代表としての起用だろうか。
柏森 進@MOSAIC.WAVはもはや説明する必要もないかもしれないが、エロゲー付属の電波ソング知名度を伸ばし、今やアニメのオープニングを担当するなどメジャーアーティストにまでなったグループだ。ここ数年で盛り上がり影響を広げている電波ソングというジャンルを代表するアーティストであり。その代表として選ばれたのだろう。【?うんだかだ〜教の野望?】はある意味今までどこからも出てきていないスゴイ曲だと思う。BPM180前後で速いのだがキックがガバキックではなくあえてテクノの硬質なキックの上に切り刻まれた原曲。僕が注目しているヨーロッパのアンダーグランドテクノのトライブにめちゃくちゃ似ている。だけど柏森 進@MOSAIC.WAVが知ってるとも思わないし単なる偶然だとは思うがこの偶然にテンションが上がった。この自由さはクラブミュージックからもポップミュージックからも離れた位置にある電波ソングという土壌でしか育った柏森 進@MOSAIC.WAVにしか出来ない曲である。曲のタイトルやブレイク部分はらき☆すた等での「俺の嫁と」キャラクターを持ち上げるある種、原始宗教的な部分をパロディーしてるのかと深読みしてしまった。
小池雅也@4-EVERは既に解散したが桃井はることのユニットUNDER17を結成して良質な萌えソング、電波ソングをリリースしてきたアーティスト。MOSAIC.WAVともラジオ番組をやる等、親交が深いらしい。ギタリストという事もありロックからのアプローチする楽曲が多い。【祭みっくす!】は打ち込みからのアプローチが多いなか唯一非常に生っぽさが出ている曲である。白石みのるのバカ騒ぎ感覚と楽曲がかみ合っていて聞いていて楽しい。中盤のコーラスがかかって来るところも気持ち良い。本人の解説があったので引用。

個人的には、大人ロック世代に向けたモノなのである。

テーマは、ヤマハイーストウエスト77

この大会は、シャネルズとサザンオールスターズカシオペア
が同時に出ていると言う非常にカオスなコンテスト、
ある意味祭りw
で、それぞれの音楽性を盛り込んでみました。
小池雅也の日常

なるほど。でもこちら方面に展望が無いのでシャネルズが分からないです・・・。

やっぱり今のアニメソング界隈のシーンの動きからしてこの4人にリミックスを担当させたのは妥当だとおもうし、4人のよさが浮き上がってきていて半端なく面白いCDになっている。ニコニコ動画で発売前に全部の楽曲が上がっていても、これがオリコン週間初登場3位になった事は別に不思議な事ではない。単なるブームに乗ろうとした EXIT TRANCE PRESENTS CODE SPEED アニメトランスBEST がニコニコ動画での事前の試聴での出来の悪さによって不評になり発売延期のとは対照的な事例。

クラブミュージック的アプローチの謎

ちょっと話は変わるが個人的に驚いている事がなぜらき☆すたのリミックでこんなにも打ち込み音楽が多いかという事。4人のアーティストのうち3人の楽曲がクラブミュージック的アプローチをしている。なぜポップミュージック的なアプローチでは無かったのだろうか。これはやっぱりらき☆すたという作品と関係してるのではないかと。その裏にあるオタク文化とも?ここからは若干推測になるけど、思いついちゃったんで書かせてください。書いちゃうぞ!書いちゃえ!

らき☆すたのリミックスとは関係なく放置してた

コンテンツの思想―マンガ・アニメ・ライトノベル

コンテンツの思想―マンガ・アニメ・ライトノベル

を読んでたんです。本自体は「乳輪問題」とかあって興味深かったのですが、個人的に物凄く共感したというかやっぱりそうなんだという部分が

難しいですね、実は『動物化するポストモダン』の初期の反応は、音楽に関心のある読者さんからのものが多かったんです。彼らは、僕の議論を、テクノやヒップホップで起こっていることとして理解したわけです。実際に「あの音像はキャラが立っている」という言いかたがあるみたいですね。その点、伊藤さんは僕よりテクノに関してずっと詳しいから、感覚的にもわかると思うけど。
伊藤 僕も『動物化するポストモダン』はテクノ方面でやったほうがもっとクリアに言えたんじゃないかと思った。
夏目 私はテクノやヒップホップに詳しくないので教えてほしいんですけど、その場合の「キャラ」というのは具体的になにを指すんですか?
彼等の言うところによると、たとえば、あるシンセの音色が鳴った瞬間にガーッと涙が出てくるらしい(笑)。それは、あるキャラの絵を見ただけでガーッと泣くギャルゲーオタクの言うこととほとんど一緒なんですよ。
伊藤 すごくわかりますね(笑)。
 いずれにせよ、ある記号一発でガーッとくるような感性は、ほかの国にもないわけではないし、それぞれ発達を遂げていると思う。ただ、物語的な感動のシステムと記号一発での感動のシステムを結びつけたメディアを発達させたところに、日本のオタク文化の特徴があったのではないか。別の言葉で言えば、オタク文化の特徴は、物語とデータベースの二重構造をうまく使っているところにある。
コンテンツの思想 3「キャラ/キャラクター」概念の可能性 P139-P140

動物化するポストモダン』を初めて読んだときに僕もこれってテクノとかクラブミュージックの話じゃないのと思ったんですよね。二次創作とかリミックスとか要素の組み合わせとか、クラブミュージックだと一般的で何気なく行われてる行為ですし。例えば「アーメンブレイク」。60年代のファンクのブレイク部分のドラムが加工されつつも、そのまま現在も様々な楽曲に使われていたりする。そういう見方をするのが僕だけじゃなかったんだって安心しました。
それと同時にだからこそ、安易な発想ですが、音を「キャラ」として捕らえてそれを楽しむ素質があるオタク文化を楽しむ層にこういった打ち込み音楽でテクノ的なモノがウケて歌詞も意味不明でインストに近い作品が初期売上が約3万枚も売れたんじゃないかと思ったわけです。らき☆すたという作品の特徴も関連してくるかもしれません。萌え4コマが原作のらき☆すたはいい意味でゆるくて物語は断片的で、重要なのはキャラクターでありそのキャラが明確に立っているアニメのような気がします。物語ではなくデータベース性が強い作品。それがあの前代未聞のオープニングソングを作らせ、このリミックスが出来てそれが売れたのではないかと。
いろいろなオタク文化が段々とクラブミュージックの感覚である「記号一発での感動のシステム」方向にいろいろなものが向かっていっているような気がするのですが、これは単なる個人的欲望かもしれません。そして、まだそれは色々とわからない部分も多いです。