どうしようもないハッピーハードコアを聞く

ハッピーハードコアはやっぱりどうにかしている。もともとはテクノウチさんのハードコア入門を見てもらえば分かるようにジャングル寄りのオールドスクールレイブの1つの流れとして出てきたもので、それが徐々に95年頃からガバの流れを組み込んで、高速化、4打ち化して行くのですが、僕の好みのストライクにはまるのがこの4打ちとブレイクビーツが絡み合う95年からトランス系やハードハウス系の流れが本流になる98年までの3年間でこの期間は相当今から考えても無茶してる曲がリリースされています。
そもそも高速4打ちにブレイクビーツというジャンルは今現在ほとんど見当たらなくて、少しだけトライブの変形とブレイクコアな人がまれに作るぐらいで珍しいのです。その破壊力とキャッチーさは凄まじくて、発祥の地イギリスでは時々思い返したようにその頃の楽曲を集めたコンピレーションがリリースされています。コンピレーションといっても当時の楽曲を丸々入れるというセパレート形式は少なく、Slipmatt等がMIXしたCDが多かったのですが、最近はCDJ用という事でセパレート形式でその頃の楽曲をDJでも使える形でのリリースも増えています。DJ的な目線で見ると高速BPM帯で4打ちからブレイクビーツに繋ぐことのできる接続詞として有効で、ドラムン→ハッピーハードコア→ガバといったジャンル横断をやり易くしてくれます。
ゴシップめいた話でチーズコアとバカにされて呼ばれいたらしいのですが、それもわかるなと言うほどどうしようもないんです。これが。どうしようもないほど上げてくるダンスミュージックというのはいろいろあるのですが、僕が好きなこの3年間のハッピーハードコアはたちが悪くて、俗に言うレイブ症候群(他に誰も言ってませんが)を引きずってサンプルがほとんどオールドスクールレイブの時代から変化せず、そこにガバから流れた男気(勢い)の文脈を含みつつ、同時代のドラムンベースをも凝視しているという曖昧なジャンルで、全体から俯瞰して見ると同じような楽曲が多いのですが、ここのアーティストに注目してみるとアーティストの特徴や立ち居地というのが良く見えてきます。ちょっとここでYOUTUBEで変遷を聞いてみましょう。

Dj Vibes & Wishdokta - Feel good


94年です。ありありと目に浮かぶレイブ症候群。4打ちとブレイクビーツの割合は半分ぐらいです。DJVibesはSlipmattと並んでジャングル寄りのオールドスクールレイブからハッピーハードコアへの道を作り上げた一人でしょう。

Scott Brown - Now Is The Time


95年リリースです。Scott Brownはこれ以前はTerror Traxx等 Rotterdam Records系列のサブレーベルからリリースしていた事からも分かるようにガバの影響が強くて4打ち重視です。95年、96年というのはガバとハッピーハードコアが同じような所を目指し始めて2つのジャンルが融解していきますが、微妙に違いはあります。ハッピー志向のガバはハッピーガバと呼ばれますが何処まで知名度があるのかはわかりません。

Diss Reaction- Jiiieehaaaa


明らかにレイブ症候群ですが、これはバカです。いやガバです。Ruffneck Recordsから95年にリリースされました。Ruffneck Recordsはブレイクビーツを取り入れた楽曲が多いのですが、その処理の仕方がハッピーハードコアのやり方とは違う気がします。ルーツはロッテルダムテクノそれ以前のシカゴハウスですし、やはり男気の具合でしょうか?

Dj DNA - Go Insane


96年です。Feel good と比べて見てどうでしょうか?ブレイクやシンセにレイブ症候群は残っていますが、注目すべきは冒頭に入るアシッド的なシンセ音です。これが98年以降のトランス化の前触れなのでは・・・。

DJ Stompy - This Is The Night


99年です。ブレイクビーツは残っていますが、トランシーな音作りからして、なんだか今までと目指す方向性が変わったような気がします。同時代のトランスの動きを全く追っていないのでわかりませんが、その辺りからの影響なのでしょうか。

Now Is The Time - DJ Hixxy & Trixxy Remix


96年リリースです。上にあげたNow Is The Time リミックスです。サンプル面では原曲を次ぎながらも、後半のトランシーな展開がこれからのハッピーハードコアの道筋を示しています。この辺りから若干の世代交代があったのではないかと思われます。

DJ Hixxy - Sacrifice


ずいぶんかっ飛ばして、2008年リリースです。DJ Hixxyですが、これが同じアーティストかと思えるほど音は変わっていますがやりたい路線はぶれていない気がします。細部に渡って見ていくとハッピーハードコアの流れはこれだけではないのですが、これがアーティストで追っていく所のハッピーハードコアの現在の1つの終着点です。
 
あと少し続きます。